今回は、内閣総理大臣や都道府県知事による「監督処分」、「事業報告書・報告徴収・立入検査」、「罰則」、「紛争解決等業務」、「貸付け自粛対応」についてまとめています。
監督処分
内閣総理大臣または都道府県知事は、貸金業法の規制を実行するために、監督権限を持っている。
(1)貸金業者に対する業務改善命令
内閣総理大臣または都道府県知事は、登録を受けた貸金業者の業務運営に関して、資金需要者等の利益保護のために必要なときは、その貸金業者に対して「業務の方法の変更」その他必要な措置を命じることができる。
(2)貸金業者の登録取消処分・業務停止処分・役員解任命令(任意的)
内閣総理大臣または都道府県知事は、一定の場合は、次の処分を命じることができる。
- 貸金業者の登録を取り消し(任意的)
- 1年以内の期間を定めて、業務の全部・一部の停止命令
- 役員の解任命令
一定の場合とは、法令違反の中でも重い規制と考えておく。
(3)貸金業者の登録を取消し(必要的)
貸金業者の登録を取消さなければいけない事由は、次の
- 登録拒否事由に該当、登録換え(新たに受けるべき登録を受けていない)、不正な手段で登録を受けた、
- 名義貸し、
- 暴力団と関与
の3つに分類整理する。
(4)所在不明者等の登録を取消し(任意的)
内閣総理大臣または都道府県知事は、次の事由に該当するときは、登録を取り消すことができる。
- 貸金業者の所在不確知→公告後30日経過しても貸金業者から申し出がない、
- 登録後6ヶ月しても貸金業を開始しない、または引き続き6ヶ月以上貸金業を休止
(5)登録の抹消(必要的)
内閣総理大臣または都道府県知事は、登録が効力を失ったとき、登録を取り消したときは、貸金業登録を抹消しなければならない。
(6)監督処分の手続き
①聴聞等
内閣総理大臣または都道府県知事は、監督処分をしようとするときは、聴聞等の手続きをしなければならない。「貸金業者に弁明の機会」、「証拠提出の機会」を与えるためである。
②公告
内閣総理大臣または都道府県知事は、登録取消処分または業務停止処分をしたときは、その旨を公告する。
- 貸金業者が貸金業務に関して法令に違反する行為をした場合には、内閣総理大臣または都道府県知事は、1年以内の期間を定めて業務停止処分を命じなくても良い。命じるかどうかは任意である。
⇒「登録の取消し」については、必要的な登録取消事由が3つある(①登録に関すること、②名義貸し、③暴力団)。 - 貸金業者が、自己の名義をもって他人に貸金業を営ませた場合、内閣総理大臣または都道府県知事は、貸金業登録を取消さなければならない。
事業報告書(毎事業年度経過後3ヶ月以内)、事業報告書の提出および立入検査
(1)事業報告書の提出
貸金業者は、事業年度ごとに、貸金業に係る事業報告書を作成し、毎事業年度経過後3ヶ月以内に、登録した内閣総理大臣または都道府県知事に提出しなくてはいけない。
貸金業登録が無くなった場合でも、貸金業者として契約した取引を全て結了するまでは、みなし貸金業者として 貸金業法等の関係法令が適用される。事業報告書の提出に代えて、毎事業年度末における残貸付債権の状況の提出(事業年度経過後3ヶ月以内に徴収するもの)を命ずるものとされている。
(2)報告徴収および立入検査
① 業務報告書の提出
内閣総理大臣または都道府県知事は、貸金業法を施行するために必要と認めたときは、貸金業者に対して、報告・資料提出を命じることができる。
特に必要があると認めるときは、「保証業者」や「業務委託を受けた者」に対しても同じく命じることができる。
② 立入検査
内閣総理大臣または都道府県知事は、その職員に対して、資金需要者等の利益保護のために必要があると認めるときは、貸金業者の営業所等に立ち入らせ、質問させ、帳簿書類などの物件調査をさせることができる。
特に必要があると認めるときは、「保証業者」や「業務委託を受けた者」に対しても同じく職員にさせることができる。
(3)協会員でない貸金業者に対する監督
内閣総理大臣または都道府県知事は、貸金業協会に加入していない貸金業者(協会員でない貸金業者)に対して、貸金業協会の定款・業務規程・その他の規則を考慮して、社内規則の作成・変更を命じることができる。
命令を受けた貸金業者は、30日以内に、その社内規則の作成・変更をして、登録を受けた内閣総理大臣または都道府県知事の承認を受ける。(承認を受けた社内規則を変更・廃止する場合にも、承認を受ける)
- 社内規則の作成・変更を命ぜられた貸金業者は「30日以内」に、その社内規則を作成・変更をして、承認を受ける必要がある(3ヶ月以内ではない)。
罰則
貸金業者等は、法令違反した場合には監督処分の対象となるほか、刑事罰を受けることがある。
1.特に重い刑罰
特に重い刑罰は、懲役と罰金の併科がある。事業者である法人にも両罰規定ある。
- 不正の手段により貸金業者の登録を受けた
- 無登録営業
- 名義貸し+
- 業務停止命令に違反して業務
2.その他
同様に併科あり、両罰規定ありのケースがある。
3.刑罰の対象とならない場合
① 貸金業者の禁止行為をしたと(虚偽告知をしたときは除く)
② 広告勧誘の際の禁止行為をしたとき(著しい誇大広告は除く)
③ 適合性の原則に違反する行為をしたとき
④ 再勧誘の禁止に違反する行為をしたとき
紛争解決等業務および貸付自粛対応
1.貸金業者は、指定紛争解決機関との間で「手続実施基本契約」を締結し、その指定紛争解決機関の商号(名称)を公表する。
2.日本貸金業協会の協会員等は、指定紛争解決機関(貸金相談・紛争解決センター)による紛争解決の内容・手続きなどをHPに掲示するなどして公表する。
3.協会員等以外の貸金業を営む者に対して苦情を有する債務者等は、指定紛争解決機関(貸金相談・紛争解決センター)に協力要請できる。指定紛争解決機関は必要な措置を講じる。
貸付自粛制度
貸付自粛制度
*自ら(または法定代理人)、配偶者または親族等は、「ある債務者を貸付自粛対象者とする旨」を、貸金業協会に申告する。
*「貸金業協会」は、これに対応する貸付自粛情報を個人信用情報機関に登録して、一定期間、当該個人信用情報機関の会員に提供する。
⇒貸付自粛情報は、5年間継続登録される(登録依頼日から3ヶ月間は申告の撤回をできない)
*「貸金業協会員」は、次の場合には、加入個人信用情報機関に対して、貸付自粛情報の提供を求める。
①個人顧客と貸付けに係る契約(極度方式貸付を除く)を締結
②極度方式基本契約の「極度額」を増額
③基準額超過・極度方式基本契約に該当するかを調査するとき
⇒貸金業協会員は、加入個人信用情報機関から、貸付自粛情報の提供を受けた場合には、自粛対象者との間で、新規貸付けがなされないように努める。
- 協会員等との間で貸金業務等関連苦情を有する契約者等は、指定紛争解決機関に対して、協力の要請をすることはできない。
⇒協力要請は、協会員等以外の者に対する場合である。 - 貸金業相談・紛争解決センターは、苦情処理手続・紛争解決手続において、当事者による主体的で自主的な解決がなされるように努める。
1.貸金業法および関係法令分野
目的・定義 (A) | ノート1 | 問題集1 |
貸金業者 (AA) | ノート2 | 問題集2 |
貸金業務取扱主任者 (A) | ノート3 | 問題集3 |
禁止行為・広告・勧誘 (B) | ノート4 | 問題集4 |
貸付けに関する規制 (A) | ノート5 | 問題集5 |
基準額超過・極度方式基本契約 (AA) | ノート6 | 問題集6 |
生命保険契約、特定公正証書 (AA) | ノート7 | 問題集7 |
契約締結前書面、契約締結時書面 (AA) | ノート8 | 問題集8 |
保証契約、受取証書・債権証書 (AA) | ノート9 | 問題集9 |
取立て行為、取立てにおける書面 (A) | ノート10 | 問題集10 |
債権譲渡等と保証契約に係る求償権 (B) | ノート11 | 問題集11 |
指定信用情報機関と貸金業協会 (B) | ノート12 | 問題集12 |
監督処分〜貸付自粛まで (B) | ノート13 | 問題集13 |
利息、賠償額の予定、保証料 (A) | ノート14 | 問題集14 |
弁護士法・サービサー法・e文書法 (C) | ノート15 | 問題集15 |
2.貸付けに関する法令と実務
3.資金需要者等の保護
個人情報保護法 (B) | ノート16 | 問題集16 |
消費者保護法、不当景品類・不当表示法 (B) | ノート17 | 問題集17 |
4.財務および会計 (D)